(2)自尊心を森で満たしたこと

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屋久島・花山歩道の原生林

なんかあたらめて、ずっと怖かったことをちゃんと書いてみたら、いろんな地平が見えてきた。第一に、私は怒ってたんだなってこと。「怖い」って逃げながらも、多分腹の底では「許さねえ!!」って怒り狂ってた。でもそれを相手に伝える勇気もなかった。

私は、「怒鳴ってくる相手」そのものではなくて、「言いたいことを言葉にして伝えられない後悔」に、あんなにもずっと苦しんでたんだと思う。だって相手には相手の事情も、怒鳴ってやりたくなる私側の何かも、そりゃどうしてもあるんだから。私が被害者だったってわけじゃない。

まあいいや、話を進めよう。とにかく私は、怒鳴られると、もはや相手の話を受け入れるだけの物体になって、なんだか自分の存在を抹消されるような恐怖にかられた。自分がすっごく小さい存在であるかのように錯覚させる外圧。でも今なら、あの恐ろしいいくつものシーンを思い起こすに、怒鳴ることの仕組みそのものがわかる気がする。

怒鳴る、それは、有無を言わさずに相手の領域に乱暴に入り込み、続けざまに放つ言葉によって相手を強引に書き換える行為なんじゃないか。私は、人は目に見えない蚕のような、柔らかなボールのようなものに包まれてふだん生きてると思っていて、それは言い換えると「自尊心」。だから、人と距離を近づけていくときは、この自尊心を大切に守りながらやっていかなきゃいけないんじゃないかって思ってる。

私は他人に一方的に怒鳴られることで、何も言い返せない圧を加えられることで、ボールを破られる(=自尊心を傷つけられる)ように感じていたんだと思う。しかも怒鳴られる(破られる)瞬間、全身に冷たいものがガーッと降りて、肌がビリビリ痛くなる。物理的な痛みも強い。

そういう状態が一定期間以上も続いたり、繰り返されたりすると、もうほとんどボールがないような状態になってしまうと思うんだよね。そうして相手に完全にマウントを取られたようになり、言われることに矯正され、思考停止していく。

自尊心は、自分を守る役割をしているものだと思う。それは自分の本体を、外側からの力によってむやみに書き換えられないようにするためなんだよね。自分を見失わないためっていってもいい。でも「怒鳴る」とか、そういう感情的で強引なやり方には、あえて「見失わす」意図がある、それは怒鳴る人にとっては無意識にでも。。。その人すら、その仕組みに巻き込まれてると気づかない、世代を超えたよくない仕組みだと思う。

だから、前回も書いてるんだけど、私は怒鳴ってくる相手に対して「怒鳴るのをやめてください」って、言ってよかったんだよね。「そのやり方では、私には話が入ってこない」って、知らせるべきだった。自尊心をちゃんと、自分で守らなければならなかったんだよね。

でも、あのころの自分にはそうするだけの元気が、もうなかった。やることがたくさんある、ってことに逃げて、怒鳴られないようにすることで精一杯、でも腹では納得いかない、でも立場が上の人に言い返したらもっと怖いかも、みたいな。あと私には、恐怖を感じると、変に相手を受け入れすぎるところがあった。だから怒鳴ってくる相手に対して、自分を守るために気に入られるように振る舞う。すでに相手との一線を引けていなかったんだな。

その日々が地獄だったとは全然思わなくて、楽しい思い出だっていっぱいある。でも、なぜだか怖かった記憶って、雲がどこまでも広がった空みたいに、その時代にあった虹とか太陽とかも覆いつくしてしまうよなとは思う。だからちゃんと整理して、あの時の晴れ間を思い出したいのかもしれない。

だから、面と向かって、怒鳴ってくる他人に対して「怒鳴るのをやめてください」言えるようになるのに何年もかかったのは、一度踏み破られてるボールや書き換えられた本体、身体そのものを、もう一度洗ったり修復したりする時間と愛情が必要だったんだって、今は思う。

20代後半は異常なくらい山を登ってたんだけど、あのころはもう有無を言わさぬ愛情が欲しかった。1人で登っては、まるで狼が遠吠えするみたいに泣いてたことが何度かあったんだけど、あれって自然の力によって、自分の傷つけられた自尊心が満たされていくときの叫びでもあったんだったんだなあって、今はちょっとわかるんだよね。もちろん当時の自分には補いたいものも吐き出したいものもあまりに多かったから、ただそれだけって訳でもないんだけど。

もちろん人からもらう愛情もたくさんあって、夫になみなみ愛されて、そのことに支えられるようになったことも大きい。それはもう絶大。ただ、やっぱりあのとき、夫と一緒にいたい気持ちよりも寸分、山や島に足が向いたのは、どこかで愛情を人間に期待することが、とてもリスキーだなと思っていたからかもしれない。少なくともそれが満たし切れるまで、人じゃなくて自然が与えてくれるものによって、ズブズブに愛し合いたい、そういう思いがとても強かったんだと思う。

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屋久島のガジュマルの森(猿川ガジュマル)で。ズブズブなころ

なんでか私は、山とか川とか海とか木々は、絶対に裏切らない、むしろ欲しいだけ愛情を与えてくれるって、本能的に知ってた。それはだいぶ後になって、幼いころに父と母がくれた大きな愛情でもあったと、気づくんだけどね。だから、それは、やっぱり書いていこうと思う。私がどうやって、そこで自分を満たしていったのか。今自分のなかに、しっかりと揺るぎない芯をもう一度持てたのは、自然のおかげが大きいから。

例えばなんかいいなって思う木があったとして、その木の前にいると、不思議とその木のまっすぐさが自分の体内にダウンロードされる感じがあるのね。

それが石でも空でもいいんだけど、自然の中にはどんなものの中にも共通して埋め込まれている光みたいなものがあって、それを自分の身体にコピーしていくと、誰かに書き込まれた落書きをさっと消していけたり、ボールを修復していけるんだよね。自然には、そこにいるだけで自分の存在を全肯定してくれる、不思議な力がある。

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 秘密のガジュマル

私は対自然によって一度それを繰り返して、元気になっていったなと思う。だからまず大事なのは、人はもっと、「愛情をもらえる相手は人間だけじゃない」と気づくことじゃないかな。人だけに求めようとすると、かなり絶望しちゃうんだけど、実は自然って、人に欠けたものを補う作用がものすごく強いんだよね。

逆にいえば、「人だけで完結された世界」に住むのは結構危ないなって思うのね。それは言葉だったり思考だったり関係だったりが支配する世界でしょ。そうじゃなくて、言葉のない、よくわからない、だけどなんか気持ちのいい「自然」っていう角度をしっかり残しておくだけで、極端に自分に自信をなくすようなことはおきなくなるはずなんだよね。

だからって自然は、「ずっと隠れているためのミノ」でもないんだよね。やっぱりそこから出なきゃいけない時はくる。自然が全部、みたいな世界もない。自然の世界でも、人の世界でも生きてるから、どちらか一方に偏ることは、問題解決にはならない。ただ、もう一度向き合ったり、今度こそ逃げないためのエネルギーを蓄える期間が必要だとするなら、そのためにもっとも効果的なのは自然だと思う。

何より自然を取り入れた環境、囲まれた場所で生きることは、その大きな一助になっていく。だから京都に移住する。

でもこれじゃなかなか伝わんないかな。とにかく方法を考えてみるよ。物語の方がいいのかもしれないね。こうやって説明するように伝えるのは、ちょっと限界がありそうだよね。

あ、ただ、ただもしこれを読んでて、「なんか慢性的に疲れてるな」とか「思考が上を向かない」とか、思い当たることがあるけど近くに森なんかない場合は、ひとまず対処法として2つ言えることがあって。まず、世界の半分は空でできてて、いつでも触れられる自然は太陽と月です。これは私が都会生活に戻るとき唯一の支えにしてたこと。

もう一つは、しっかりと森のある神社でただぼうっとするだけでもかなり違うってこと。神社の森は大抵古いから、街路樹よりも力になってくれやすいんだよね。「でももうずっと辛いな」ってなってるなら、うんと田舎とか自然に行ってみた方がいい。環境が自分に与える力の大きさを味わうと、バランスの取り方もできてくると思う。

私はわりと感じやすい方みたいで、生きていくのにはそれなりの一線とか回復法みたいなものが必要だったりする。もしかしたら「目上の人に怒鳴られるくらい平気じゃない? 社会じゃ当たり前でしょ」って人もいっぱいいると思うし、その体育会系的方法論って私が生まれる前から、「効率がいいし」ってんで受け継がれてきたものなんだろうし。

ただそういう濁流に埋もれると私はあっという間にダメになる。だから、ちゃんと一線をひき、自分を説明する言葉を持たなきゃいけないねって思うんだよね。だから、あのころの「言葉がなかったころの自分」に向けて、書いておきたいと思いました。

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うま。

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